コンタクトレンズによる眼障害
日本のコンタクトレンズ使用者は、1800万人から2000万人に達すると推定され、全国民の13%以上、ほぼ7人に1人がコンタクトレンズを利用しています。近年、新しい素材のものなど、多種多様なコンタクトレンズが登場しています。製品の進歩により、コンタクトレンズの安全性や装用感は向上していますが、一方で間違った方法で使用していたり、ケアを怠ったりして、目に障害を起こすケースも増加しています。日本眼科医会の調査報告によれば、コンタクトレンズ関連受診患者さんの中で、眼障害で受診した患者さんの割合はここ数年約4%でした。
障害を起こす要因
コンタクトレンズによる目の障害は、主に次のような要因によって起こります。
①コンタクトレンズが目に合わない。
コンタクトレンズのカーブや大きさが目に合わないとレンズの機械的な刺激により目に障害が起きます。
②ケアを怠る
コンタクトレンズのケアを怠ると、レンズに蛋白質や脂質などの汚れや細菌や真菌などの微生物が付着し、そのまま装用すると眼にアレルギー反応や病原体による感染症を起こす原因になります。
③長時間の装用
コンタクトレンズを長時間装用していると角膜への酸素供給が不足し眼の障害が起きやすくなります。
コンタクトレンズによる主な眼障害
コンタクトレンズによる障害の多くは角膜に起こります。他にはアレルギー性結膜炎のように結膜に起こる障害もあります。
角膜上皮障害
角膜(黒目)の表面には上皮と呼ばれる薄い皮があります。汚れたコンタクトレンズを装用するなど、長時間装用による酸素不足が生じると、角膜上皮の細胞が障害されます。程度の軽い「点状表層角膜症」では症状はないか、あってもゴロゴロするなどの異物感や軽い充血程度ですが、進行して「角膜びらん」「角膜潰瘍」ができると強い痛みや充血、熱感が起きたり、涙が止まらなくなったりします。特にソフトコンタクトレンズは痛みを感じにくいため、気づかないうちに悪化しやすいので注意が必要です。角膜上皮が障害されると目のバリア機能(異物の侵入を阻害する機能)が低下するので、感染症も起こしやすくなります。
角膜感染症
細菌や真菌、アカントアメーバなどの病原体が角膜に感染し、炎症を起こします。視力障害や強い痛みなどの症状が起こります。コンタクトレンズの使用を中止し、抗菌薬の点眼や全身投与などの治療が行われますが、重症の場合、視力障害が残ったり、失明したりすることもあります。

角膜新生血管
角膜(黒目)には血管がないため、酸素は空気から涙を介して取り込んでいます。コンタクトレンズの長時間装用や汚れたレンズの使用などで、角膜が酸素不足になると、角膜の周囲から血管が侵入してきます。これを角膜新生血管といいます。血管の侵入が著しい場合は、コンタクトレンズの装用を中止し、眼鏡に変更します。

角膜内皮障害
角膜内皮は角膜のいちばん内側にある層でポンプのように水分の出し入れを行って、角膜の透明性を保つ働きがあります。角膜内皮細胞は生まれたときには、単位面積1㎟当たり約4000個ありますが、加齢ととも、に減少し、新たに産生されることはありません。
障害の主な原因は、長時間装用や汚れたレンズの装用によって、角膜に慢性的な酸素不足が起こることです。軽い場合には酸素透過性のよいコンタクトレンズに替えたりします。内皮細胞が少し減少しても自覚症状はありません。しかし、あまり少なくなると、白内障や緑内障の手術では、手術の影響でさらに内皮細胞が減少する危険があるため、将来、これらの手術が難しくなる可能性もでてきます。
アレルギー性結膜炎(巨大乳頭結膜炎)
レンズに付いた汚れに対するアレルギーによって炎症が起こるものです。上まぶたの裏(結膜)に乳頭というブツブツが生じます。症状は、かゆみ、めやに、ゴロゴロ感などで、コンタクトレンズがくもりやすくなります。治療は抗アレルギー剤の点眼をしたりコンタクトレンズの装用を中止したりします。

障害を起こさないために
適切な処方
コンタクトレンズによるトラブルを防ぐには眼科専門医を受診して、自分の目に合ったレンズを処方してもらうことです。合っていないと角膜との摩擦が起こりやすく、トラブルのもととなります。また角膜や涙の状態、レンズの種類、生活スタイルなどによって、適切な装用の仕方やレンズケアの方法は異なります。眼科専門医からきちんと指導を受けることが大切です。
無理のない使用
決められたルールを守って、無理のない装用を心がけましょう。装用時間を守ることは大切ですが、異常を感じたら、装用時間内でもすぐにレンズを外してください。レンズを外してしばらくたっても異常がなくならない場合は、眼科を受診して下さい。いつコンタクトレンズを外しても困らないように予備の眼鏡を常に携帯することを習慣にしましょう。
正しいレンズケア
ハードレンズは外した後とつける前にきちんと洗浄して、外した後はレンズケースで保管します。ソフトレンズでは、細菌やカビがつきやすいため、洗浄後は薬品による消毒が必要です。洗浄は、最近ではつけおき洗浄も普及していますが、より洗浄効果の高いこすり洗いのほうがお勧めです。レンズケースもカビや細菌がつきやすいので、毎日水洗いして乾燥させ、清潔を保ちましょう。
定期検査を受ける
症状が現れない障害もありますので、自覚症状がなくても、定期検査は必ず受けてください。目に障害が起こった人は、定期検査を受けていない人に多くみられます。定期的に検査をうけていれば、障害が起こる前にレンズの汚れやドライアイやアレルギー性結膜炎など、障害の原因を見つけて対策をたてることもできます。なるべく3ヶ月に一度は検査を受けるのが望ましいです。